第160回プログラミング研究発表会

2026年並列/分散/協調処理に関する サマー・ワークショップ (SWoPP2026)

日程:2026年8月6日(木)〜 8月7日(金)
会場:飛騨・世界生活文化センター(通称:飛騨センター) (岐阜県高山市)  中会議室1
   およびオンラインのハイブリッド開催を予定

  • 発表募集
  • 発表申込期間:2026年5月13日(水曜日) 〜 5月19日(火曜日)
  • 追加発表申し込み期限:2026年5月26日(火曜日)
  • 投稿論文原稿提出締切:2026年7月2日(木曜日)
  • 発表予稿提出締切:2026年7月31日(金曜日)
  • 参加申込
    • 参加申込をされた方に予稿やオンライン参加方法をご案内いたします
    • 参加申込は当日も受けつけおります
    • 参加費は無料です

担当:加藤 弘之(国立情報学研究所)、関山 太朗(国立情報学研究所)
発表申込送信ページ:https://forms.gle/m9qgdtaSuRj12UYr6

問い合わせ先:加藤 弘之(E-mail: kato [at] nii.ac.jp)

プログラム

  • 1件あたり45分(発表25分,質疑・討論20分)(短い発表は発表20分,質疑・討論10分)
  • ◯印が登壇者です.

8月6日(木曜日)

*セッション1(10:50-12:30):座長 安部 達也(千葉工業大学)
2026-2-(1): 10:50–11:35
値とメモリ領域の所有権分離による永続データ構造の関数的インプレース実装
◯大槻 亮太(電気通信大学)
佐藤 重幸(電気通信大学)
小宮 常康(電気通信大学)

永続データ構造の効率的な実装では,操作時に不要となるメモリ領域を破棄せず即座に再利用するインプレース更新が広く用いられる. 
しかしRust言語において,既存のAPIでこれを実現しようとすると破壊的更新を行う命令的実装になり,Rust言語の表現力を活かした関数的で明快な実装が難しいという課題があった.
本研究では,値とそのメモリ領域の所有権を分離して扱うスマートポインタ Sc を提案し,それに基づいたインプレース更新を伴う関数的実装を示す.
そして, Sc に基づいた実装と既存の命令的実装の性能を比較し,その実用性を実験的に示す.

2026-2-(2): 11:45–12:30
Javaストリーム最適化の適用可能性に関する実証的分析
◯米林 滝之丞(電気通信大学)
佐藤 重幸(電気通信大学)

JavaストリームAPIは,関数的なパイプラインによる宣言的記述が可能となる一
方,命令型のループ実装に比べて実行時オーバーヘッドが大きい.そのオーバー
ヘッドを除去するバイトコードレベルAOT最適化器Streamlinerが提案されている
が,任意のパイプライン構成に対して適用可能な最適化ではない.本研究では,
Streamlinerの最適化をGitHub上の100件のJavaプロジェクトを通して実証的に評
価し,その失敗原因を分析する.そして,実世界コードで最適化を成功させ性能
向上をもたらす,コード修正を示す.

*編集委員会 13:30-15:10

*セッション2(15:30-16:35) :座長 鵜川 始陽(東京大学)
招待講演: 15:30–16:30
量子プログラミング言語の資源解析― プログラム意味論の視点を交えて ―
◯酒寄 健(東京大学)

本講演では,量子プログラミング言語の静的資源解析に関する講演者の最近の研究を紹介する.まず,量子プログラミング言語の特徴を,古典的プログラミング言語との違いを軸に概観した後,量子回路記述言語Quipperに対する型に基づく静的資源解析手法を取り上げる.さらに,このアプローチとモナドをはじめとする意味論的概念との結び付きを明らかにした講演者らのPOPL 2026論文を紹介し,意味論的抽象化がもたらす効果を議論する.最後に,これらの成果を踏まえた今後の研究展望を述べる.

*セッション3(16:45-18:00) :座長 馬谷 誠二(神奈川大学)

2026-2-(3): 16:45–17:30
ビットシリアル型を備えたハードウェア記述言語
◯大石 芽吹(東京大学)
高前田 伸也(東京大学, 理化学研究所)

ビットシリアル回路は,多ビット値を1本の信号線上へ時間方向に展開することで,回路面積を削減できる利点がある.ただし,既存のハードウェア記述言語ではシリアル値が通常の1ビット信号と区別されず,ビット数やビット間隔を設計者が意識的に管理する必要がある.
そこで本研究では,ビットシリアル値の長さ,間隔,タイミングを表す型を備えたハードウェア記述言語を提案する.型検査においてシリアル値の生成・消費の進行状態も追跡することで,ビット単位の操作のタイミングも静的に検証する.型検査後は,信号の接続関係と各サイクルにおける有効状態を明示した中間回路表現を構築し,そこからCMOS回路やSFQ回路にマッピングする.ケーススタディとして提案言語でビットシリアル加算器を記述し,SFQ回路に変換して正しく動作することをシミュレーションで確認した.

2026-2-(4): 17:30–18:00(短い発表)
Rustの中間表現MIRに対する制御フローグラフ解析による変数の生存範囲可視化手法の提案
◯岡本 祐希(芝浦工業大学)
篠埜 功(芝浦工業大学)

Rustにおいて変数の生存範囲は当該変数に関連するリソースが確保されている範囲であるが,この生存範囲はメモリ最適化などにおいて現状では十分に利用されていない.
本研究では,制御フローグラフ解析により,Rustのコンパイラrustcで用いられる中間表現MIRのコード中の各変数$v$について,MIRの各文$s$を,$s$において$v$が生存している,$v$が生存している可能性がある,$v$が生存していない,の3通りに分類するアルゴリズムを提案する.
このアルゴリズムで得られた,変数$v$が生存している文$s$において,$v$が$s$において参照可能であることをLean 4と一部自然言語により証明した.
さらに,各変数$v$が生存している範囲を,上記3通りに分けて可視化するツールを,RustとLean 4で実装した.
このツールを利用することにより,変数と関連したリソースの管理が容易になることが期待される.

8月7日(金曜日)

*セッション4(9:00-10:40) :座長 佐藤 重幸(電気通信大学)
2026-2-(5): 9:00–9:45
仮想選択ビュー上の更新操作に対する関数従属性を考慮した基底表への翻訳
◯近藤 湧太(法政大学 情報科学研究科)
日高 宗一郎(法政大学 情報科学研究科)

関係データベースにおいてビュー上の更新操作を基底表の更新操作に翻訳することで論理的データ独立性を維持しつつ更新を実現できるが,SQL標準では関数従属性を用いてビュー更新可能なビュー定義の拡大を実現しているものの,曖昧性の問題を回避するために依然として更新可能なビュー定義に厳しい制約が設けられている.レンズを用いた言語的アプローチにより関数従属性を保存しながら曖昧性と副作用を排除する双方向変換の手法が提案されているが,ビューを実体化することで得られる更新差分を扱っているため性能上の懸念が残る.本研究ではまず選択ビューに着目し,ビュー上の更新差分ではなく更新操作を基底表の更新操作に翻訳することで,ビュー自体の実体化を避けながら基底表の更新を行うことを目指す.本発表では提案手法の現状と実装の経過を報告する.現状では更新されるレコード集合を生成し,それを用いて基底表を更新する.

2026-2-(6): 9:55–10:40
可逆プログラミング課題における大規模言語モデルのコード生成能力の比較評価
◯牧野 透也(南山大学)
横山 哲郎(南山大学)

本研究では,可逆プログラミング言語Janus を対象に,大規模言語モデル(LLM)が形式的制約を満たす可逆プログラムをどの程度生成できるかを実験的に評価する.Janus プログラムは,通常の出力の正しさに加え,構文制約,情報保存性,および補助変数を最終的に消去するクリーン性を満たす必要がある.実験は,単一生成実験(V0),self-refine を導入した探索実験(V1),および生成と検証を自動化した実験ハーネス(genjanus)を用いた本実験(V2)から成り,難度の異なるタスクセットで複数のモデルを比較した.結果として,BNF を提示しない条件では基本的なswap でも成功率が低く,BNF や静的制約を提示することで基本タスクの成功率は大きく改善した.さらに,self-refine は可逆プログラム生成に有効であり,例えばGPT-5.4-mini の配列反転タスクでは成功率が初回生成の5%から5 回のself-refine 後85%へ向上した.一方,RLE やFibonacci などの高度な状態管理を要する課題では,強力なモデルでも大きく低下した.難度の高いHard12 タスクセットではClaude Opus 4.8/high が最も高く,最難関のExtreme12でも上位モデルは85~93%に達する一方,中位・小型モデルでは大きく低下した.これらの結果は,LLM が局所的な構文制約や単純な可逆更新には適応できる一方,補助情報の保持と消去,停止条件とアサーションの整合性,および可逆アルゴリズムの大域的設計には依然として困難をもつことを示す.可逆プログラミング課題は,LLM の構文追従能力と大域的状態整合性の設計能力を分離して観測できる評価軸となる.

*編集委員会 10:50-12:30

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